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【行政書士のお役立ちブログ】

生命保険金と相続

相続が発生し、被相続人(亡くなった人)に莫大な借金があったことが判明するとします。プラスの遺産を超える額の借金であるなら、たいてい「相続放棄」をしたいと思うことでしょう。相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。手数料はたったの800円。相続のあったことを知ったときから3か月以内に提出しなければなりません。さもなくば、相続財産全て(プラスの遺産も借金も)を一括で「単純承認」したものと見なされます。
 
でも、被相続人が生命保険に入っていて、その保険金額が借金をはるかにしのぐ額だったらどうでしょうか。
 
「借金が理由で相続放棄したいけど、放棄したらこの保険金も貰えないのでは?だったら放棄せずに、保険金で借金を返済して残ったお金を手に入れたい!」
 
と考えるかもしれません。
 
いいえ。相続放棄をしても、保険金の受取人となっている相続人は、相続人固有の財産である保険金を全て得ることができます。受取人にとって、保険金は相続財産ではないのです。相続財産でなければ、遺産分割協議の目的にもならず、他の相続人(受取人でない)と分ける必要がありません。

英文契約書:「完全なる合意」条項

英文契約書の一般条項の一つに、「完全なる合意」(Entire Agreement) というものがよくあります。
 
これは、当該契約書に規定された合意のみが拘束力を持つ、ということを規定するものです。つまり、その契約で扱っている対象に関する他の契約書・合意書・念書・覚書・口頭の合意・以前の話し合いで取り決めたこと全てに優先して、当該契約書が適用されるということです。「契約書には含まれていなくても、あなたは前に約束したじゃないか」 という異議が入り込む余地をなくすのです。
 
一方、一般的な日本語の契約書には、「本契約で定めていない事柄が生じた場合、甲及び乙は誠心誠意話し合って解決するものとする」 というような文言がよくあります。もしそうできるのならそれは素晴らしいことです。本当にそれができるのなら、法律で契約書の作成・交付が義務づけられている種類の取引でない限り、そもそも契約書はいらないかもしれません。できることならそうしよう、という心は日本人の美徳だと思います。
 
美徳はえてして特定の文化圏限定で通用するものです。そして、海外取引においてはその美徳が命取りになることも。英文契約書では、「話し合う」という規定の代わりに、「通知」する規定が多いように思います。何日以内に書面で通知しなければならない、といったものです。裏を返すと、通知義務さえ果たせば話し合わなくても希望が通るということになります。

特別受益の持ち戻し免除が有効か

被相続人が生前、相続人の誰かに財産を贈与していた場合、この相続人が 「特別受益」 を得ていたとされることがあります。(民法903条)
 
903条によれば、財産の相続分の算定においてこの特別受益の分を考慮することとされています。いわゆる「特別受益の持ち戻し」というものです。
 
例えば、生前に1000万円の贈与が特別受益にあたる場合、相続財産にその1000万円を戻して各自の相続分を計算し、その後受益相続人の相続分から1000万円を引くのです。これは以前のブログ「生前の資金援助と遺産分割」で触れたことがあります。
 
しかし、遺言でこの特別受益の持ち戻しを免除することもできます。903条3項に、
 
被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、
  遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
 
とあるからです。ちなみに、この3項の中の「前2項の規定」とは、特別受益の額が相続分の額と同じかそれ以上なら相続分はもうありませんよ、という規定です。
 
特別受益を得ていながら相続分も免除されるなんて、他の相続人から見るとかなり不公平な感じもします。しかし、家庭の事情もそれぞれで、何をもって平等とするかは単純な問題ではありません。依頼を受ける専門家も、「表面的な平等」をやみくもに振りかざすのではなく、依頼者のお話をじっくりお聞きし、背景をよく知る必要があると思います。

外国人による遺言

日本に滞在する外国人はどのように遺言を作成することができるのでしょうか。
 
「遺言の方式の準拠法に関する法律」 の第2条に、
 
「遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする
 
一 行為地法
二 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法
三 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した国の法
四 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
五 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法」
 
とあります。つまり、日本に滞在している外国人は、遺言をする場所としての日本の法律が認めた方式(一号:行為地法)か、自国の法律(二号:国籍を有した国の法)で遺言書を作成することができます。
 
日本に滞在する外国人が日本の方式で遺言を作るための法的根拠は前述の行為地法の要件が全てをカバーするので、住所(三号)や常居所(四号)は問題にならないかと思います。ただ、公正証書遺言を残したい場合、短期滞在やビザなしで3か月以内の滞在となっている方は住民登録されませんので、やはり一号の行為地法の問題となります。印鑑登録もできませんので、通常は印鑑証明書を提出するところですが、パスポート等の文書を提示したうえで拇印や指印で押印すれば足りるようです。 それ以外の在留期間の外国人は住民登録され、印鑑登録もできますので印鑑証明書を提出することになるでしょう。

公正証書遺言作成時の証人

遺言を公正証書で作成する場合、証人2人の立ち合いが必要です。(民法969条1号)では、誰が証人となることができるのでしょうか?
 
民法974条に「証人及び立会人の欠格事由」が定められています。
 
「次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人」
 
ですから、成人で、相続に関係ない人で、遺贈によって贈与されない人で、公証役場で働く人の親族でなければ誰でも証人になれます。
 
証人は何のために立ち会うのでしょうか?
 
民法969条4号には、
 
「遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押す」
 
とあります。遺言者本人が自己の意思に基づいて遺言していること、また公証人による筆記が正確であることを確認して、署名押印するのが証人の任務です。
 
信頼できる友人に証人を頼むこともできるかもしれませんが、財産の内容を知られるのには抵抗があるものです。それで、公証役場に予め証人を手配してもらう(有料)か、行政書士等の専門家に報酬を払って依頼することもできるでしょう。公正証書遺言の作成・手続きをすでに依頼しているなら、大抵の場合はその行政書士等が証人の1人になってくれるはずです。

自筆証書遺言の日付

公正証書遺言よりも自筆証書遺言のほうが手軽で費用もかからないことから、「自筆証書遺言での作成を考えている」 というお問い合わせが多いと感じます。もちろん、自筆証書遺言も民法で規定されたれっきとした遺言ですから、きちんと書けば(遺言書の効力としては)何の問題もありません。(遺留分の問題、内容によって親族関係がぎくしゃくしないかどうかは別問題です。)
 
自筆証書遺言をきちんと書くための要素の一つに日付があります。日付は、客観的に特定できる、暦上の具体的な日を記載する必要がありますので、平成○○年○月○日 という書き方でも、2013年○月○日 という書き方でも良いということになります。
 
また、客観的・具体的に特定できれば良いので、「75歳の誕生日」 とか 「平成○○年12月末日」 という記載でも良いとされています。「40年目の結婚記念日」 という方法も有効となり得ます。
 
いずれにしても、日を特定できなければなりませんから、シンプルに「平成25年~」 や 「西暦2013年~」 で記載するのが安全でしょう。
 
ちなみに、自筆証書遺言は前文「自書」しなければなりませんから、日付印などで日付を押すだけにとどまると、遺言は有効性を欠くことになりますから注意しましょう。

「泣く子も黙る」 公正証書遺言

自筆証書遺言を作る場合、費用はほとんどかかりません。紙とペン、それから封筒を用意すればよいのです。もちろん、行政書士等の専門家に内容の起案を依頼すればその報酬は支払わなければなりませんが、自筆証書遺言は基本的に費用ゼロで(または比較的安価で)作成できるのです。そこが最大のメリットでしょう。
 
対して、公正証書遺言にはそれなりに費用が掛かります。まず、公証役場へ支払う公証人手数料があります。それから、証人を行政書士等に頼めば2人で2万円前後(遺言作成を依頼している行政書士に頼む場合は、証人としての報酬がすでに含まれている場合が多い)。もちろん遺言内容の起案や必要書類の収集、公証人との事前打ち合わせを行政書士等に依頼すればその報酬(報酬額は事務所によってまちまち)も支払います。戸籍、固定資産税評価証明書、不動産登記簿の写しを取得するための手数料も必要です。
 
特に、公証人への手数料の算定が気になるところです。これは、遺言に含める財産の価額の大小、また相続させる人の数によって変わりますから、当HPの「遺言書の基礎知識」をご覧ください。
 
このように、公正証書遺言にはそれなりの費用が必要となります。「遺言は書きたいけれど、公正証書はお金がかかるから自筆がいい」とおっしゃる方も実際多いと言えます。もちろん自筆証書遺言もきちんと書けば問題はないでしょう。しかし、相続発生後の手続きのスムーズさを公正証書遺言と比べると、天と地との差があります。遺言の内容に納得がいかない相続人も、遺言が公正証書なら「ゴネる」余地は皆無となるのです。まさに「泣く子も黙る」公正証書遺言というわけです。

相続人が外国に住んでいる場合

遺言がなければ、相続財産は相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成して分けることになります。この遺産分割協議書には、(たいていの場合手続きで使いますから)実印を押印します。市町村に印鑑登録してあるハンコです。
 
しかし、相続人の誰かが海外に住んでいて日本の印鑑証明を出せない、すなわち実印としての機能を果たすハンコが存在しない場合はどうするのでしょうか。
 
海外に住んでいる相続人が日本国籍を持つ日本人であるならば、当該国の日本大使館・領事館でサイン証明をしてもらいます。方式として以下のものがあります。
 
 
貼付方式=遺産分割協議書を大使館に持参し、職員の面前で署名捺印し、その遺産分割協
議書に証明書を貼付してもらう方式。
 
単独方式=別個の書面に署名捺印し、その筆跡が確かに本人のものであることを証明しても
らう方式。
 
 
相続人が日本人でない場合、当該国の日本大使館・領事館は関わりがありません。ですから、たいていの場合は遺産分割協議書(その国の言語に訳したものか、日本語と当該外国語を並記したもの)をその国の最寄公証役場で公証してもらい、その後裁判所で、また最終的には当該国の外務省で認証してもらう必要があります。日本で「信憑性のある文書」として扱うためです。

金融機関での手続きについて

家族や親族が亡くなり相続が開始すると、遺族(たいていの場合は同居してた家族)は多種多様の手続きに追われることになります。家族が亡くなって気持ちの整理もままならぬ状態で手続きを効率よく、正確に行ってゆくのは本当に大変です。気づかないうちに精神的に疲れるもののようです。
 
相続手続きの代表的なものとして、預貯金の解約・名義変更があります。不動産の名義変更などの他の手続き同様、被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍が必要になります。まずは戸籍をそろえることが相続手続きの基本とも言えます。
 
昔の戸籍などは特に読みづらい字体で、しかも手書きで記されているので、最終の戸籍から最初の戸籍までを「さかのぼる」のも一苦労かもしれません。書類収集の専門家でもある行政書士に依頼すれば最短で取得してくれるでしょうし、役場の人に相談することもできます。解約・名義変更したい口座のある金融機関の行員にとりあえず揃っている分だけ見せて、どの自治体に残りの戸籍を請求すればよいか尋ねるのも一つの手です。
 
遺言があればその内容に沿って解約・名義変更をしますし、なければ相続人全員で「遺産分割協議」をして「遺産分割協議書」を作成し、金融機関に提出します。ただ、金融機関によって必要な書類が違いますから、必ず問い合わせましょう。多くの場合、銀行所定の払い戻し請求書等に全員の署名押印が要求されます。

and や or の連発

英文契約書の特徴の一つに and や or を連発した並列・併記を含む文があります。どの単語・句・節・考えを and や or でつないでいるのか、じっくり読み込まないと見えてこないこともあります。
 
and は、普段は「および」としますが、並列のレベルを見て「ならびに」とすべき時もあります。同様に、or も普段は「または」としますが、やはり選択のレベルを見て「もしくは」とすべき時があります。実際には、文全体の複雑さ等も考えて、適宜、「・」(中点)も駆使したりします。
 
なんにせよ、契約書は、正しく、解釈の余地を残さないように訳さなければなりません。(契約書の原文を書いた当事者が、あえて解釈の余地を残したかった場合は別でしょうけれど)